「懐かしさ」の正体

「懐かしさ」の正体

宮台真司の『絶望断念福音映画――「社会」から「世界」への架け橋』(メディアファクトリー)を読んでの気付き。これは社会学者の宮台が、近代成熟期にある日本社会に適応し、生き残っていくための代替的な実存形式のモデルを、映画を中心としたサブカルチャーの中に求めた――平たく言うとつまり、生きづらさを抱えている人たちのために、こういう生き方もあるよっていう指標を提示することを目的とした――評論集である。2005年公開の映画『ALWAYS三丁目の夕日』がヒットした時、不思議な社会現象が生じたことがある。映画の舞台となった時代のことを知らない若者が、「懐かしい」という感情にとらわれたのだ。昭和30年代にはまだ生まれておらず、時代の空気も知らなければ、文物もほとんど見聞きしたことがない若者たちが、なぜか「懐かしい」と感じた。これ...「懐かしさ」の正体